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今年度は、京都市立西総合養護学校と知的障害者入所更生施設「洛西ふれあいの里更生園」、知的障害者通所授産施設「洛西ふれあいの里授産園」を研修先に選びました。西総合養護学校は、6年連続で文部科学省の教育研究開発学校指定研究を受けておられ、今年度がその最終年に当たっています。また、すぐ隣りには洛西地域の福祉の拠点である洛西ふれあいの里授産園、更生園が位置しています。洛西地域の福祉の拠点となっているこれらの学校や施設の取り組みや現状について研修しました。 |
京都市立西総合養護学校/ふれあいの里更生園・授産園/参加者感想
学校に到着後、校内見学をさせていただいた後、浜口先生から西総合養護学校の取り組みについて詳しくお話いただきました。以下、その内容の一部を紹介させていただきます。 西総合養護学校は、1986年の設立当初は、発達遅滞の児童・生徒を対象とする養護学校として出発しましたが、2004年、地域に根差し、地域の障害のある児童・生徒を支える学校として再編され、名称も西養護学校から西総合養護学校に変更されました。この再編によって、西京区、右京区を中心とする新しい通学区から156名の知的障害(自閉症等の障害を含む)、身体障害の子どもたちが4台のスク?ルバスで通ってきています。再編される前に比べ、スク?ルバスでの送迎時間が短縮できました(通学時間の平均は約30分)。 総合養護学校として目指していることは、知的障害のある子どもたちと、身体障害のある子どもたちとが互いに刺激しあい、支え合いながら、地域での暮らしと自立を目指し、社会の一員として自ら学び自ら行動することです。そのためには、教職員の側の子どもたちへの支援を、なだらかに減らしていくことが、将来の自立、社会参加の実現にとって大きなポイントになります。 支援のもとでの「できること」を増やすことで達成感を得るとともに、個々の子どもたちが担える役割を見つけ出していくことで、ゆっくりと、なだらかに支援そのものを減らしていく。それらの積み重ねが自立、社会参加へとつながっていくという展望に立って日々の取り組みが行われています。 具体的には、生活体験学習の中で、計算力や国語力の必要性を実感し、またそれらを体験学習で実際に活用することで、学力を高めていくができると考えています。。 また、様々な障害のある子どもたちを、同一クラス(3?4名)にすることで、それぞれが長所を発揮し、短所を補い合う関係が築けます。例えば、身体障害のある生徒と自閉症の生徒が同じクラスにいる場合、自閉症の生徒が、落ち着きのある身体障害の生徒の行動をモデルにして落ち着きを得ることができると同時に、逆に積極性に欠ける身体障害の生徒が、自閉症の生徒の積極的な動きに刺激を受けて行動がすみやかになるといった関係を築けている実例がみられます。 総合養護学校のもう一つの柱になるのが、地域ぐるみの学校づくりです。障害のある子どもが1つの課題を解決・改善しようとすれば、学校だけではどうしようもなくて、多様なつながり(多様な地域ネットワ?ク)の中でしか改善できないケ?スが増えてきています(例えば「てんかん発作の薬が切れてしまって家にない」という場合に、要保護の関係部門や医療関係者、学校とが連携して初めて何とか解決にいたったという事例など)。その意味で、地域での障害児・者生活支援ネットワ?ク会議は、きわめて重要な役割を担っています。この会議では、西総合養護学校、障害者生活支援センタ?、福祉事務所、社会福祉協議会の4つの機関が運営の中心となり、そこに居宅支援事業所、子ども支援センタ?、通所・入所福祉施設、就学前施設、児童相談所、保健所が加わったかたちで、個々の児童・生徒についてのケ?ス会議を行っています。最初のうちは面識の無いもの同士が自己紹介をするだけで時間の大半が過ぎてしまうという会議になりがちでしたが、最近は個々の子どもの目の前の問題・課題をどのように解決していけばいいか、具体的現実的な話し合いが持たれるようになりました。 西総合養護学校では、地域ぐるみの学校づくりの一環として、保護者代表、地域住民の代表、学識経験者、福祉関係者等をメンバ?とする学校運営協議会を設け、学校への第三者評価を受けたり、地域の教育力の向上に向けた様々な取り組みを進めています。 さらに、地域におけるセンタ?機能を果たすために、育(はぐぐみ)支援センタ?を学校内に設置し、子育てに関する保護者からの教育相談、福祉サ?ビス・福祉機器利用に関する相談、地域の小学校、中学校等からの、LD等の児童・生徒への支援の方法についての相談、障害のある生徒の進路先に関する相談や支援業務を行っています。 |
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昼食後、見学人数の関係で2班に分かれて、西総合養護学校と道路1本を隔てて隣接する「ふれあいの里更生園」と「ふれあいの里授産園」を見学させていただきました。両施設の見学を終えた後、ふれあいの里保養研修センタ?で、両施設の職員の方から、それぞれの施設の概要について説明をしていただきました。 <洛西ふれあいの里更生園> ふれあいの里更生園は1992年に開設された、日常生活に支援を必要とする知的障害者の入所施設です。定員は60名で、この定員は常に満杯状態です。職員は30名です。 開所当時は、一部屋4人定員で人間関係をめぐるトラブルが多かったのですが、現在は近くに3ヶ所のアパ?トを借りることで、一部屋1?2人の人数を保っています。日中は、約半数の入所者が近くの知的障害者共同作業所ホップランドで作業をしています。現在、昼間は全員が外部に出て作業・活動できるよう取り組みを進めているところです。 課題としては、幼児期における支援が、学齢期にうまく引き継がれることなく、さらに学齢期と学齢期を過ぎた時期の支援との引き継ぎも途切れがちであるという問題があります。これは社会福祉の部門と教育の部門とがうまく連携できていないことに原因があると考えられます。この部分を改善することだけでも、これから入所される方々は様々な面でずいぶん助かるのではないでしょうか。 <洛西ふれあいの里授産園> 洛西ふれあいの里授産園は、知的障害者の働く場として、1989年に開設された通所施設です。定員は50名で、3分の2の方が療育手帳のA判定を受けておられます。平均年齢は30歳代前半です。養護学校の高等部を卒業されてから来られる方が多いようです。通勤は、洛西地域からの自主通勤が半数以上で、他の方は福祉巡回バスを利用されています。 作業の内容は、タオル類(ス?パ?銭湯その他のバスタオルから福祉施設のタオルまで)の洗濯、乾燥、梱包、手織り製品の製作、紙製の箱の組み立て、陶芸作品の製作(京都駅ビルで販売しているものもある)などです。特にタオル類は、応じきれないほどの注文があり、現在は7?8社へ納品しています。作業に対する報酬は、一人当たり1日につき700円で、1ヶ月1万2?4千円程度です。陶芸については、現在は京都駅ビルでしか販売されていませんが、お一人の方の作品を今後個人名を前面に出して、積極的に販売していこうと計画しているところです。 作業によって得られる収入は、平成16年度で約3000万円あったのですが、支出が3000万円を超えているため、赤字経営になっています。 作業内容の実態としては、適切な支援があれば作業に従事できる就労支援と、生活介護が中心となるデイサ?ビス支援とに分かれています。 現在抱えている課題として、通所されている方々への就労支援という点で、保護者が本人の就労を「望んでいないという実態」があるという点です。これは最近の厚生労働省の調査でも授産施設に通う本人及び保護者の約70%強が就労を望んでいないという結果にもはっきりと現れています。この現実の根底には、保護者の側に「もし本人が就労したとき、解雇されたり様々なトラブルに巻き込まれたらどうしようか」という恐れがあるのではないかと想像されます。知的障害のある方々の自立への希望と保護者の現実的な心配をどのように乗り越えていけばいいのか、悩ましいかぎりです。 また、当授産園は平成15年度から厚生労働省の委託で就労生活支援相談事業を行っていますが、就労に関して様々な人たちがいろいろな立場で個別に関わってきていること、また個人情報保護法による自己規制が働いて、相談に関わる人々の間で十分な情報交換ができていないこと等が積み重なり、私たちのところに相談が回ってくるころには、「末期的な状況」に陥ってしまっていることがあります。障害のある方たちへの支援をト?タルに見ていくシステムの構築が不可欠であるように思います。 また、これは廃案になったのですが、「障害者自立支援法案」がもし施行されたとしたら、私たちの試算では授産園で作業している方たちへの支払い報酬が半額になってしまうようです。このことも見学者の方々には、法案の中身をよく知っていただくうえで、心にとどめておいていただければ有り難いと思います。 |
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・以下、当日施設見学研修に参加していただいた方々の感想を掲載させていただきます。一部文言を変更させていただいた場合もありますのが、ご了承下さい。 ・ 府養研施設見学会に参加させていただき、有り難うございました。特別支援教育の問題について興味があり、今日、京都市立西総合養護学校の見学があることを知り、参加しました。(受け入れ対象の)児童・生徒を広げていく一方で、地域化、ネットワ?ク化を進めるという課題に対して、どのように具体的方法論をもって臨んでおられるのかが、説明をお聞きすることで、はっきりしました。校内体制でどのように地域支援ネットワ?クへの人材を捻出されているのか、考えさせられることも多かったです。大阪市でも時間をかけて(地域支援ネットワ?クを)構築していく必要を感じました。現場における支援費の問題も深刻なことがよくわかりました。 ・ かねてから西総合養護学校は訪問したいと思っていましたが、見学できて本当に良かったです。自立と社会参加、本人と保護者の願いを大切にした教育を保障することは、言葉でいうのは簡単だけれど、実践は大変だろうと思います。また、洛西ふれあいの里更生園、授産園の見学も参考になりました。独立採算を目指し、苦労されていることがよくわかりました。制度改革の波を受け、施設職員の方々の悩みや、今後の不安など伺うことが出来て、良い勉強になりました。 ・ 西総合養護学校で障害種別が多様な子どもたちが、それぞれの長所を出し合いながら共に生活している様子が、自分の持つ養護学級の雰囲気ににていて、ほほ笑ましく思いました。ふれあいの里授産園では、狭い中でそれぞれ落ち着いて作業しておられました。こまかいところで構造化等の工夫をしておられるのがわかりました。ふれあいの里更生園では、少しでもゆったりとした静かな環境を確保するべく、夜アパ?トを使ったり、昼半分の方を作業所に割り振ったりという工夫をされていて、大変だなと感じました。 ・ 京都が総合養護学校として動き出していると聞いていましたが、大変わかりやすい話しをしていただきました。西総合養護学校の施設、よく考えられているなあと思いました。総合になった時の保護者や職員の不安が、実際動き出すと、そうでもなく、いい方向をむいているとお聞きしました。大阪もそうなっていくのかな。更生園、授産園、とっても明るく、今までの施設とはずいぶん違っていました。 ・ 小学校の子どもと日々かかわっていると、なかなか学齢期後のことまで考えるということができません。今回見学させて頂いて、漠然とですがもっと長い目で子どもたちの暮らしを考えていかないといけないなあと感じました。大阪以外の施設を見せて頂くのが初めてだったので、視野が広がった気分になりました。いろんな立場の人ともっともっとお話して積極的に連携していかないと…と思いました。 ・ 施設見学の今までのイメ?ジが変わりました。障害のある人々にとって、明るくきれいな施設で生活できることは、幸せなことだと思います。(行財政上のしわ寄せを受け)不十分な施設・設備の中で作業せざるを得ない方々が多い現状に歯がゆい思いで一杯でした。しかし本日見学させていただき、目からうろこでした。一日も早く、今日見学させていただいた授産園、更生園のような施設が全国的に広がっていくといいなあと思います。そうなることで保護者の安心する顔が見られるなあと思います。(私自身も)その広がりに向けての取り組みの一端にでも参加できたらと考えています。 ・ 西総合養護学校については、特別支援教育に関して先駆的な取り組みがとても参考になりました。更生園では、入所者の生活の安定のため、アパ?トを借りたり、外での就労の場を確保したり、現状に満足しないで工夫を続けておられる姿勢にあたたかいものを感じました。授産園では、大きなクリ?ニングの設備にびっくりしました。落ち着いて作業しておられ、とても参考になりました。 ・ (西総合養護学校では)教室の中だけでなく、建物そのものから構造化されていてわかりやすいのでびっくりしました。(ふれあいの里更生園、授産園に関して)小学校にいると、どうしても「大人になってからのことは先の話」と、親も教師も思ってしまうので、今回の見学はそのことを考えるいいきっかけになりました。 ・ 昨年に引き続き、施設見学に参加させていただきました。自分の学校の設備と全然違い、うらやましくもあり、現実に戻ると落ち込んでしまうところもあります。更生園・授産園は、たいへんきれいで明るく、びっくりしましたが、予算面など厳しい面もあるとお聞きし、参考になりました。今自分が教えている子らが、将来働く環境が、少しでも明るい方向に向かって欲しいとあらためて考えさせられました。 ・ 初めての参加で、見学したり、説明していただいたりした中で疑問に思っていたことが、少し解けたように思います。障害者の施設というと、暗いイメ?ジを持たれやすいのですが、(更生園・授産園は)とても明るく清潔で、地域の中でも受け入れられやすい環境にあると思いました。 ・ 初めて参加させていただきました。西総合養護学校の建物を見て、学校というイメ?ジではなく、環境のよい住みよい所という印象を受けました。1教室3人で担任1人というのも驚きでした。学校を卒業してから隣りの授産園などで働ける(場合もある)というのも、先の見通しが持てるのでよいと思いました。どの施設もきれいで明るいので働きやすいと思います。事業の資金面で苦労されているということ、また、職員の方々が24時間体制で働いておられるということも知りました。他府県での施設見学は参考になりました。 ・ 私の担当している今の養護学級も、今年から車イスの子どもをむかえ、いろいろなタイプの子どもが入り交じった中での取り組みをしています。両者のよさを引き出せるような指導ができれば、と思っています。具体的な様子を聞かせていただき、参考になりました。(更生園・授産園を見学して)地域で活動できる場所を通して、一般就労にもつながる、そんな世の中を作っていく必要性を感じました。 ・ 府養研の施設見学研修に初めて参加しました。普段では、なかなか見学できない施設を見学させていただき、また、詳しい説明を聞かせてもらって非常に勉強になりました。今後の教育活動に生かしていきたいです。 ・ 総合養護学校として取り組みを進めておられる京都市立の養護学校の一つを見学でき、現場の話も聞けて勉強になりました。また、施設の職員の方たちの支援費制度の現状についての話を聞けたこともよかったです。 ・ 地域ぐるみの学校づくりを目指して、地域との交流の様子をおききして、地域に根ざし地域とともに歩む学校の大切さを痛感しました。 ・ 有り難うございました。いろんな意味で先を行く部分が見学できたように思います。 |